二話

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「……男子、他に余ってなかったの?」 「別に男女別で分かれろって言われてないし」  私の質問に微笑みながら答えられると、なんだか私が変なことを言っている気分にさせられる。  まあ確かに冬真の言う通りなのだけど、下手に目立つことはあまりしたくない。  私が返答を渋っている間に了承を得たと勘違いしたのか、それとも私の意見なんて知ったことではないのか、冬真はいそいそと自分の机を私の机の隣に並べた。 「ちょっと、まだいいって言ってない」 「もう面倒だからこの三人でいいだろ」  いつの間にか机を引きずってきていた穂高がそう言って、私たちの机の向かい側に乱暴に机を合わせてきた。  なんなんだこの人たち、とは思ったものの余り物同士なのだし変に反対するのもおかしな話だろう。  他に組む人がいるのかと言われれば、残念ながら全くいないことだし。  先生にリーダーを決めろと言われたので、三人とも無言のまま拳を突き出してじゃんけんを行った。  こんな適当な人たちの寄せ集めな上に掛け声までなかった割にスムーズにじゃんけんが出来たのは、なんだか不思議で少し面白かった。  グーを出して負けた穂高が顔をしかめつつも文句は言わず立ち上がり、先生から問題の書いた紙を持ち帰ってきた。 「ほら、えーと……名前なんだっけ」  穂高が一枚ずつ紙を手渡してくる時に尋ねられた。  どうやら私の名前を思い出せなかったらしい。  名字すら覚えてないのかこの人、と思わずまじまじと穂高の顔を見つめてしまう。  私でさえクラスメイト全員の名字はなんとなく覚えているし、ましてや席も近い方だというのに。  よっぽど周りに興味がないのだろうか。  どうりで組む人がいないはずだと納得がいく。  自分のことを大分棚に上げさせてもらった。 「……若竹美羽」  思い出せないようなのでフルネームで答える。  ああ、そういえば。と頷いているけど本当かどうか疑わしい。  それでも飄々としているからか、それほど悪印象を受けないのは不思議だった。 「俺は八坂冬真。よろしく」  私の自己紹介のようなものを聞いたからか、冬真が面白がるように笑いながらそう言った。  いや知ってますけど、とはなんとなく言えなかった。  冬真が本当に面白そうに笑ったからかもしれないし、馬鹿にするような雰囲気が微塵も感じられなかったからかもしれない。
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