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三話
冬真と二人で静かな夕食を終える頃には、いつのまにか雨は止んでいた。
最近の食事は何もない限りは、冬真が作ってくれている。
妊娠したことが分かってから一緒に住み始めたわけだけど、本当にこっちに引っ越してきてよかったと思う。
私だけだったら適当に買ったもの好きなように食べるという、体にあまりよろしくない生活になっていたに違いない。
冬真の作る食事は、妊娠生活の栄養バランスに殊更注意された食事だけどとても美味しい。
私は悪阻はあるのだけど食べつわりの方だから、むしろ食べていない時の方が気持ち悪くなる。
冬真が作ってくれた夕食を残さなくて済むという一点については幸いだった。
「ごちそうさま、おいしかったよ」
「それはよかった」
少し前までやたらと塩辛いものが食べたくて白米に塩を振ってかなりの量を食べたりしていたから、冬真としては心配してくれていたのだろう。安心した顔で食器を片付けてくれた。
「まあ、俺より誠の方が上手いけど」
無意識にだろう冬真が自然に言って、しまったと言いたげな表情を見せた。
私は気づいてないふりをして笑う。
「誠は器用だからね」
私が気にしていないふりをしたのを冬真は素直に受け止めてくれたらしい。
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