6 やまない流星雨

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6 やまない流星雨

 月面基地とのレーザー通信を終えた曽根が通信用個室から出てくるのを伊丹は待っていた。伊丹とともにフロアに戻った曽根は、そこがパニック状態に陥っていても、さして驚かなかった。 「ご苦労さんだったね、曽根君」 「いえ。こちらこそ、ご期待に沿えませんでした」  伊丹は軽く頷くと口を開いた。 「『宇宙(そら)の子供たち』は世界中の放送網にアクセスして短いが決定的なメッセージを送信してきたよ。『星に願いをかけて、みんなでずっと仲良くいましょう』とね。そして4基の質量射出機(マス・ドライバー)をフル稼働して今までの隕石が石ころに思えるほどデカい大岩を大量に打ち出しはじめたよ。たぶん、今回の大絶滅は恐竜時代の比ではないだろう。ここの職員たちにも緊急退避命令が出たところだ……まぁ、どこに()ようが無駄だが」 「教授はどうするんですか」 「そうだね」伊丹は大きく息を吐いた。「部屋に年代物の酒を隠しててね。一杯やりながら、その時を待つことにするよ。どうだい君も一杯」  首を横に振る曽根に伊丹は微笑みかけた。 「彼らの言うように、人生にそのまた続きがあるのなら……また会おうじゃないか」  握手を交わして伊丹と別れた曽根は、研究施設を出ると歩いて夢洲(ゆめしま)の海岸沿いにある小高い丘へ向かった。  突然、強風が吹き、絶え間ない地鳴りとともに、海面が激しく水しぶきを上げ始めた。流れ星になるには大きすぎる隕石が巨大なクレーターを、どこかの大地に穿(うが)った余波だろう。  残された時間は、そう長くない。  曽根は顔を上げると、家族と再会できますようにと願いをかけた。  夜空には、けっしてやむことのない色とりどりの流星雨が降り続いていた。           了
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