天の川はどこですか?

6/9
前へ
/9ページ
次へ
 心太…? たっくん…?  え、たっくんのお父さんって心太だったの…?  あまりの驚きに、私の涙腺は一気に閉じてしまった。瞬きすらできない。突然の出来事を自分の中でどう処理していいか分からず、その場に突っ立ったまま。  先生らしくちゃんと振舞わなきゃと思う反面、大人になった心太の顔が高校生の頃の私の恋心を呼び覚ます。  心も頭も、この現実についていけない。 「先生、一緒に写真を撮ろうよ~」  たっくんの何も知らない無邪気な顔が、何だか涙を誘う。 「今日の先生、泣いてばっかりだな、大丈夫?」  男前のたっくんはそんな大人びた事を言う。だから、たっくんってモテるんだ。  私はハンカチで涙を拭いて笑顔を作る。でも、心太の顔はまともに見れない。 「先生はここ、ほら、心太も来て~」  心太?  たっくんはお父さんを心太って呼んでるんだ… 「よ、美緒、久しぶり」  あんなに会いたかった人なのに、こんな再会なら会わない方がよかった。平静を保てるほど私は大人じゃない。 「俺のLINE見ただろ?」  私は下を向いたまま頷いた。 「心太、美緒先生、パパの方を見て。  ほら、写真撮るよ~~」 パパ…? 「父さん、この天の川をちゃんと写してよ」  心太はそのカメラを持つ男の人にそう言った。その男の人の隣には、若くて綺麗な女の人が微笑んでいる。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加