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「美緒先生~~
そろそろ片付けをお願いしま~~す」
遠くから他の先生の声がする。
「は~い、分かりました」
私は心臓がドキドキして、きっと声がうわずっているに違いない。
でも、ここは幼稚園で私はチューリップ組さんの担任の美緒先生で、大好きな人と再会したからといって、子供達の事を忘れるなんて絶対にない。
「心太、今日はありがとう。
私、もう、行かなきゃ…」
そう言って私が心太に手を振ると、心太はもう一度私を呼んだ。
「美緒、今日は七夕だろ…
ご飯食べに行こうよ。
仕事が終わったら連絡して。
待ってるから。じゃあな」
心太はさりげなくそして当たり前のようにそう言うと、家族の元へ戻って行った。
私は舞台に貼られた大きな天の川の絵を外しながら、涙が止まらない。
天の川を挟んだ織姫と彦星の一年に一回の再会に、まるで便乗してしまった気分。
それか、私の大好きなチューリップ組の子ども達が天使となって、織姫と彦星に頼んでくれたのかもしれない。自分達ばっかり再会しないで、美緒先生のお願いも聞いてあげてって。
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