第二話

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 翌日、学校を終えて一度帰宅し、私服に着替えてから学童に向かった。決められた始業は十七時半だが、毎日少し早めに着く。  賑やかな館内に入ると、数人の子供たちが走り寄ってくる。こうして笑顔を向けてくる姿を見ていると、あまり愛想の無い自分でも上手くやれているのかな、と少し安心する。  事務室で職員の人に挨拶をしつつ、身支度を整えた。と言っても、指定の制服があるわけではないので、職員用の名札を首から下げるだけだ。今日来ている児童の名前を確認し、三十分後のお迎えに備える。その中に四倉悠希の名前もあって、心が浮ついた。 「何かやることあります?」  事務作業をしている職員に聞いた。 「今日は落ち着いてるから大丈夫。子供たちの相手しててくれるかな」 「分かりました」  学童には、小学校一年生から六年生までの児童がいる。同じ小学生といえど、六歳も差があれば遊び方も変わってくる。年齢だけではなく、性別の差もある。性格だって当然違う。ここで働くようになってから、そういう当たり前のことを学ぶ機会が増えた。 「あおちゃん」  走り回る子供たちを見ていると、後ろから声をかけられた。女の子が二人、足元でこちらを見上げていた。比較的大人しい子たちで、一緒にいる姿をよく見る。 「これ、キャンドルつくったの」  そう言って持ち上げて見せてきたのは、透明な袋に入っている、円柱の形をしたカラフルなキャンドルだ。学童では定期的にイベント事を行っている。昼間に働けないので実際に参加したことはないが、こうして作ったものを見せてくれたり、話を聞かせてくれる子は多い。 「そっか、今日はキャンドル作りしたんだっけ」  しゃがんで目線を合わせると、うん、と控えめな笑顔を見せた。 「もうすぐクリスマスだから、おうちでつかってパーティするの」 「楽しみだね」 「……それでね、これは、あおちゃんに」  もう一つ持っていた袋を見せて、こちらに寄こす。受け取ると、隣にいた女の子も同じように、持っていた袋を寄こしてきた。 「俺にくれるの?」 「うん。ふたりでつくったの」 「すごい上手に出来てるじゃん。使うのもったいないなぁ」  名前から連想してくれたのか、青色を基準に水色や黄色のマーブル模様になっていて、星の飾りが上にくっついている。もう片方は、ハートの飾りだ。職員の手助けもあったのだろうが、こういう細かい作業はさすが女の子というべきか、センスがある。 「ありがとう」  お礼を言うと、ふふ、と小さく笑い、走って行ってしまった。
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