act7

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何もない部屋明かりをつけ、女を置いた。 ガチャ 鍵をかけた 「ごめん、何もしない、ここにいてくれ」 フラッと立ち上がる、ドアを開ける、開かない、引っ張った、カギをかけられた。 どん、どん 「開けて、お願い、開けて・・・」 だんだんと力なく扉を叩く。一時間ほどして静かになった、男は鍵を開けた。女は端にまるくなって眠っていた。泣きじゃくった顔は真っ赤になっていた、男は毛布を掛けると、隣に横になった。 「ごめんな、こんなことするつもりじゃなかったんだ」 昨日、ママから預かった鍵を返すつもりはなかった、でもなくしたら困るから一本作りに行った。弁当箱を置いて帰ってくればいいだけだった。雨が降ってきた。クローズの看板。台風のせいで、店を早く締めたのだと思った。扉は開いた、店に入ると誰もいないようだった。奥の席で抱き合う人影。 ママと抱き合う男。紙袋が落ちた。びっくりした顔は次の瞬間微笑んでいる。思わず鍵を投げつけた。夕方言っていたことと違うじゃないか、これがあの人たちの世界なのかと思った。みおになんて言ったらいいのかわからなかった。 死という言葉が離れない、男は、寝室から何かを持ってくると女に何かつけた。 そのまま、電気を消して寝室へと入った。 どれくらい眠ったのか、部屋の明かりは消えて、毛布が掛けてあった。 重い体を起こす、腕に何かついている。手錠、そのまま扉に向かう、ドアを開けた、スッと開いた。静かな部屋、男はいない、トイレに行き、何とかして下着をおろし用を足した、洗面台で手を洗い、顔に水をかけた。鏡を見た。 (ここはどこ?私、何をしているの?) 手錠のかかった腕、トイレから出ると、大きな窓から月明かりが入り込んでいる。ベランダ、カギに手をかけた。 携帯の鳴る音がした。 バタン バタバタバタ 扉の開く音、人が走る音、体が宙に浮いた。 「ハア、ハア、よかった、間に合って」 女の体を抱く男 (誰?) 男はベランダのカギをかけるとロックして女の手錠に何かした。 「死ぬなよ、死ぬときは俺も一緒だからな」 女を抱きしめた。 「寝よう、まだ、朝までは時間があるから」 「・・・煙草・・・吸いたい」 「わかった、一本吸ったら寝よう」 男はカウンターに座らせると、女のカバンから煙草とライターを出して目の前に置いた。 キッチンへ入ると灰皿を出した。 冷蔵庫を開け冷たい水をコップに入れて、女の隣に座った。震える手、煙草を出せない。男は一本出すとそれを渡して火をつけた。震えながら吸う。煙草を抜き取り、コップを握らせた。 ゴクゴクと水を飲む。 コップを置くと煙草を渡した。灰皿に手を伸ばす、男は引き寄せた 何を話すでもなく、男は黙って横に座っていた。 女が吸い切るまで待った 「手錠は外さないよ、さっきみたいなことが起るかもしれないから」 女を抱きかかえるようにして、さっきまでいた部屋に連れて行く、女は隅にいくと膝を抱え座った。 男は布団を押し入れから出し引いた、 「布団に寝なよ、おやすみ」 電気を消して扉を閉めた。真っ暗な部屋、女は部屋を出ると自分のカバンを持って部屋に入った。 男は寝室の扉を開けたままその音を聞いてベッドに入った。 スマホを見る、海へ行った日の動画、みんな楽しそう、ママとのツーショット。イヤホンを耳に音楽をかける、大音量で流れるサウンド、胸が痛くて張り裂けそうだった。 カバンの中のパンフレット、音楽を消す、暗闇の中、見えるはずのない物をぱらぱらとめくる、横になった、映画がよみがえる、男の泣き顔、笑い顔が見える、目を閉じた、映画のシーンが写っていた。
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