act9

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act9

女はキッチンに行くと小さい鍋を出して作り始めた。大きなバスローブの腕をまくり上げ材料をいろんなところから出して作り始める。ほとんどのものに火が入っているから、すぐにできた、鶏肉で作った肉じゃが、みそ汁、きゅうりの漬物を切った。 「出来たよ」 バスローブを着た男が来る。 「はえ―、ほんとに?」 カウンターに並ぶ食事、何もない部屋に住んでいた人が作ったとは思えない物が並んでいる 「いただきます、うめー、これホントに作ったの?」 「いただきます、お、我ながらうまく云ったね」 「この黒いのなんだ?のりか」 「のり、しけってたの出てきた」 「オー、そいや、あった、二枚のこってたろ」 「これになった、ごはんのおともー」 「へー、すげーな、うまし、ごはんおかわり」 「へーへー、たんとおあがり」 「明日弁当にできるかな」 「肉じゃがダメ、いたんじゃう、にんじんある?」 「ん、ある」 「そっか、お肉か」 「ひき肉あるぞ」 「なんか作ろうと思ってたんじゃないの?」 「ハンバーグ食べたくてさ、でも結局、インスタントの方がおいしいじゃん」 「でも金欠か」 「なんかあると思うよ」 「ごちそうさまでした」 「冷蔵庫のぞいていい?」 「お、何かしてくれるの?」 自分の食器を持って行き洗う、冷凍庫を開ける 「ねえ、これって一か月ぐらい食べれるんじゃないの?」 「そうなの?安い時に買ってそのままなのかな?」 「紙と書くものかして」 メモ用紙とボールペンを渡した 男は片付けをして女の横からのぞいた。 「よしできた」 女は弁当の作り方を言った、焼き物は一度にいっぱい焼いて冷凍するなどなど 「急いでるときはね、ラップの方を、ステンレスにあてておけば、半解凍で使えるから便利よ」 レクチャーもした。 「へー、じゃあ、弁当と同じ材料で違うのが夜食えるんだ」 「そう、すごいでしょ」 「今晩はじゃ何するの?」 「まだ余ってるから、ひき肉カレー、明日の朝、ハムを入れたスープでおしまい」 「じゃ、今からとかして、ハンバーグ作って弁当と明日の夜用か」 「そういう事、で溶かしておくから、二時ごろから作ればいいね」 「やっぱり、みおはいい奥さんになれるね」 ドキッとした、過去がよみがえった。 ―みおはいい奥さんになれるな、でもごめんいっしょにはなれない 昔の男の声 「タバコ吸っていい?」 「いいよ」 ここにいちゃいけない。何とか帰らなきゃ、又捨てられる、怖い、その思いが頭をよぎった。 「あの、明日、仕事だから帰らなきゃ」 男はムッとした顔になった。部屋に行き何かを持ってきた。 「これなんだよ」 叩きつける封筒、男の名前 「これってさ、立ち退きだろ、誰だこの名前」 「ママの本名・・・」 「じゃ、あそこはママの部屋なのか?」 「借りてもらってたの、女じゃ何かあったら怖いからって」 「家賃は?」「五万」 「安いな」 「立ち退きが前提だったから」 「で、どこ行くの」「きまってない」 「どうすんだよ」「帰って考える」 「考えなくていい。光熱費込五万でかしてやる」 「いいよ、何とかするから」 「どうせなんとかするって、結局誰かの世話になるんだからさここ来ればいいじゃんか、ちゃんと、家賃入れてくれればいいんだからさ」 女はムッとして口をとがらせた。 「来週ぐらいには何とかしないと追い出されるぞ、ママは知ってんだろ?」 「うん、知ってる」 「明日仕事は」「早番」 「何時から」「八時から」 「よし、じゃあ、明日は一緒に出る、で、帰りに家に行って、服を持ってここへ来る、そうと決まれば、そうだ、今から行って何か持って来よう、すこしずつ持ってくれば大きいのは後でいいもんなよしそうしよう」 「ま、待って、勝手に決めないで」 「だって、今月いっぱいだぜ」 「わかってる」 「ここ来たらいいじゃんか」 「だって、私、健二の事何も知らない・・・」 「あ、そうか」
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