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健二は隣に座ると身の上話を始めた。
体の事、家族の事、誰を恨むわけでもなく、ここまで生きてきた。
「体の事は仕方がないと思ってる、だから、みおには生きてほしいと思ったんだ、子供がいなくても幸せになれるってことを」
涙を流しながら話を聞く女の頭を抱いた。
(素直すぎるぜ、だからみんなほっとけないんだな)
「でもいっしょって」
「シェアハウスだと思えばいいじゃん、そんな固く考えないでさ」
「ほんとにそれでいいの?」
「かねないとき、弁当作ってくれたら食費浮くだろ、お願いします」
「そっか、毎月十万は大金だね、二十年か」
「五万はいってきたら余裕で返せるから、ローン早く終わらせられるし」
「そっか、そう考えるよね、じゃ、一年とりあえずお世話になろっかな」
「よっしゃー」
「でもね、何にもしないって約束してくれる?」
「それはできないかなー」
「じゃ、やっぱりいい、帰る」
「わかった、出来るだけしません、これでどう?」
「いやだ、やっぱりいい」
「何でだよ、今やったばっかりジャン」
「それとこれとは別」
「同じじゃねえか」
「やっぱり帰る」
「ごめんごめん、わかったよ」
「では大家さん、お願いします」
店で健二に見られた後、なんとも言えない寂しさを覚えた。
二人が出かけた後、ママはみおの部屋を訪れていた。
自分のものをバッグに入れた。
洗濯物がかかっている、男物のシャツに下着、
「捨てられたのは私の方かしら」
洗面所の歯ブラシや、洗顔フォームを処分する。大きなゴミ袋はいっぱいになった。
―家具、家電は処理してください
メモを一枚置いた。
「またね」
ごみを持って大きなバッグを持って部屋を後にした。
夕方二人は女の部屋へ戻ってきた。
「とりあえずの物だけ持ってさ、あれ、ママさんきたみたいだな」
扉を開ける、きれいに片付いた部屋
「え?」
中に入りテーブルのメモを見る、洗面台、化粧箱、押し入れ、ママの物は無くなっていた。
座り込む
「わかってたんだから、又店に行けばいいじゃねえか、あそこはママの城なんだろ?」
「うん」
差し出した手を掴んだ。男は引き上げると抱きしめた。女は泣いた。
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