act9

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健二は隣に座ると身の上話を始めた。 体の事、家族の事、誰を恨むわけでもなく、ここまで生きてきた。 「体の事は仕方がないと思ってる、だから、みおには生きてほしいと思ったんだ、子供がいなくても幸せになれるってことを」 涙を流しながら話を聞く女の頭を抱いた。 (素直すぎるぜ、だからみんなほっとけないんだな) 「でもいっしょって」 「シェアハウスだと思えばいいじゃん、そんな固く考えないでさ」 「ほんとにそれでいいの?」 「かねないとき、弁当作ってくれたら食費浮くだろ、お願いします」 「そっか、毎月十万は大金だね、二十年か」 「五万はいってきたら余裕で返せるから、ローン早く終わらせられるし」 「そっか、そう考えるよね、じゃ、一年とりあえずお世話になろっかな」 「よっしゃー」 「でもね、何にもしないって約束してくれる?」 「それはできないかなー」 「じゃ、やっぱりいい、帰る」 「わかった、出来るだけしません、これでどう?」 「いやだ、やっぱりいい」 「何でだよ、今やったばっかりジャン」 「それとこれとは別」 「同じじゃねえか」 「やっぱり帰る」 「ごめんごめん、わかったよ」 「では大家さん、お願いします」 店で健二に見られた後、なんとも言えない寂しさを覚えた。 二人が出かけた後、ママはみおの部屋を訪れていた。 自分のものをバッグに入れた。 洗濯物がかかっている、男物のシャツに下着、 「捨てられたのは私の方かしら」 洗面所の歯ブラシや、洗顔フォームを処分する。大きなゴミ袋はいっぱいになった。 ―家具、家電は処理してください メモを一枚置いた。 「またね」 ごみを持って大きなバッグを持って部屋を後にした。 夕方二人は女の部屋へ戻ってきた。 「とりあえずの物だけ持ってさ、あれ、ママさんきたみたいだな」 扉を開ける、きれいに片付いた部屋 「え?」 中に入りテーブルのメモを見る、洗面台、化粧箱、押し入れ、ママの物は無くなっていた。 座り込む 「わかってたんだから、又店に行けばいいじゃねえか、あそこはママの城なんだろ?」 「うん」 差し出した手を掴んだ。男は引き上げると抱きしめた。女は泣いた。
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