act10

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act10

「これで終わりか?」 「うん」 「忘れ物無いか?」 「うん、みんなもった」 「健二―先行ってるぞー」「オー頼むは」 男は友人を連れてきた。レンタカーで借りた軽トラックに家具や家電を積みこんだ。 いらない物は、ネットで売り、少しの収入にした。立ち退きという事で前金やら何やらが戻ってきた。 「これ、少しだけど、ローンに使って」 ありがたく受け取った。 「・・・いこっか」 「うん」 何もなくなった部屋を見回した、約三年の想いで。扉を閉め。 鍵をかけた。女は新宿の町を後にした。 それから…。 「やべっ、遅刻!」 テーブルの上には、弁当、携帯、ハンカチ、そしてカバンが置いてある 全部紙袋に入れ走って駅へと向かう 「セーフ」 ボーッとしていた、起されたのは覚えていた、でもどこかの意識が飛んでいる。吊革にもたれながら思い出す。 ―起きろー、遅刻するぞー、先行くからね、知らないよ 「うん、起きた、支度する」 「体起せ、ほら」 腕を引かれ、起き上がった 「二度寝は無し、じゃあね、行ってきます」 「いってらっしゃい」 (この後何したんだっけかな) このところ、残業が増えた、四月になるといろんなものが改正になって仕事が増える、落ち着くのはいつも夏になるころ、九月の終わりに出会った女、好きになって同棲を初めて八か月、五月のゴールデンウイークも終わり、又忙しい日が続いていた。 「お、愛妻弁当、いいねいつも」 「まあね、かねないからさ」 「でも、マンション買ってんだからな、偉いよ」 「お前ん所も大変だろ」 「もうさ、夜泣き、朝方まで続くから、このごろカプセルばっかでさ、かねなくなるのはえーよ」 「でも、将来があるんだから、今かね掛けとけばさ」 「子供なんていらねーよ」 「あ、それすーげーむかつくんですけど」 「あ、ごめん、悪気はなかった」 「まあ、頑張れや、父ちゃん」 「お前もな」 「おうよ」 夕方五時半決まってメールが来る ―食事は? ―頼む いつもの所へ行くと女が待ってる 「これ、ありがと」 昼に食べて空になったの弁当箱を渡す 「間に合った?」 「うん」 「はい、これ、大丈夫?疲れてない、ドリンクはいってるから」 「ありがと、今日は九時には終わるから」 「じゃあね、先かえるね」 夕飯の弁当、栄養ドリンク、あったかい飲み物、ありがたかった、カップめんを食べる同僚たちの横で、堂々と弁当を広げて食べる優越感。 三月の中ごろから、移動や何やらで、仕事が増えていった、休みの日はずっと寝ていられた。ゴールデンウイークもどこにも連れて行けなかった、二人で、ずっと部屋にいた、それでも楽しいとみおは言ってくれた。 掃除、洗濯、食事の支度、この頃はみんなしてもらっていた。みおには感謝していた。 約束の一年まで四か月、それまでに、男としてけじめをつけたかった。
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