act3

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黒い帽子をかぶった人を探す。 「いた」 男は走った、見失わないように。 ピピピピ 「ん?ママ?なんだろ。もしもし?」 ―あいつ、携帯ないって、くっそー 「ミーちゃん、さっきの男、気を付けて」 「ありがと、大丈夫、心配しないで、じゃあね、おやすみなさい」 話していた横顔から、明かりが消えた。 ―ハア、ハア、やっと会えたんだ、ここで巻かれてなるもんか ガード下を通り、大きな道沿いを歩く、左には、高層ビルが立ち並ぶ、右側、民家のある方へと歩いてゆく。古いビルのような建物に入ってゆく。中は迷路の様、足跡が響く。それを頼りに歩く。 音が止まる覗き込んだ。ガチャ、ガチャと鍵を開ける扉の前に、女が立っている。 ―ここか 扉の開く音、閉まる音がしてまた覗き込んだ、すぐに出てくる人影、同じような格好。男は呼び止めた。 「なんすか?」 「すみません、間違えました」 似た格好、間違えたのか? 「くそー」 バァン 隣のドアをけ飛ばした。 ドキン ドアの後ろに立っていた、のぞき窓から外を見る、男が真っ赤になってドアの前にいる。ドアを一枚隔てて両側に立つ二人。 「やっと見つけたのに、なんでだよ」 男と目が合った気がした、のけぞった。 男はカバンから何か出すと、また歩き出した。 へなへなとその場に座り込んだ。 「どうしよ、ここもわかっちゃう」 立ち上がると 「みお、しっかりしなさい、今まで乗り越えてきたんだから、ここでくじけちゃだめよ」 両手でほっぺたをぺしっとした。 紙袋、中からシャツを出す、クリーニング店のメモ。 ―しみ抜き、完全ではありません、これ以上はできません、申し訳ありません。 少しあとが残っていた、そのまましまおうとした。 「あれ、ブラは?」 メモの裏に何か書いてある 「ブラはこの次まで預かる」 「ハア?何考えてるのこの人、お風呂入ってねよ」 タオルで頭を拭きながらふとゴミ箱に目が行った。ごみ箱から、名刺を拾い出した。 「島田健二・・・」 冷蔵庫からペットボトルのお茶を出し、煙草に火をつける。 「変な奴」 ピピピピ 知らない番号が、音を鳴らし部屋の中に響く 「あ、非通知、忘れてたー」 切れた、今度はメール、好きなサウンドが部屋いっぱいに響く。 「なに、これ!ん?」 名刺を見る、番号が同じ、メールも同じ 「わっ、わ、わ」 あわててスマホを落とした。電話がつながる、 「へ、かけてないのに」 ―おい、携帯ないなんてよくも嘘言えたな 「お客様のお掛けになった・・・」 ―あほ、そんなの通用しない!部屋開けてくれ 「あの、何かお間違えじゃございませんか?」 ドーン ピンポン、ピンポン、ピンポン 扉をける音、立て続けになる呼び鈴 電話を切った。 のぞき窓から外をのぞく、男が立っていた。 「な、なんで」 「なんでじゃない、開けろ」 「いや、警察」 「警察、そんなの必要ない、開けろ、そろそろ、住人が怒り出すぞ」 ガチャ 「何の御用ですか?」 「チェーンはずせ」 「嫌です、帰ってください」 ―うるさいぞ ―静かにしろ 「ほらな」 にやっと笑う顔、あきらめた、はーと大きなため息をついてドアを閉めチェーンを外した。 (こいつ確信犯だ) ガチャ 「いっ」 思い切り引っ張られ、ドアノブから手が離せなかった。 「へー、俺、誘われてる?」 パジャマ姿に今きづいた、開き直る、扉を開けたまま中に入った。 「あんた、ストーカー、何でここに来てるの?」 声が外に響く。男は扉を閉め、玄関に立って女を見ている。
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