act1

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涼しい風が入ってきた。四時、まだ明けきらない夜。 嫌な夢・・・  ベッドから抜け出しトイレに向かう、顔を洗い、ふと見る鏡 (また洗ってある、見たくないのに!)  せっけんを鏡にぬりつけた.。 ―あいつの胸でけーよな ―一回ぐらいやらせてくんねぇかな  大っ嫌いな体、胸ばかり大きくて、中学の制服は既製品が入らなかった。 「ナントか安くできませんか?」  母親のねぎる声・・・いやだった。  思春期の男たちは、そっちにばかり目が行く。そして何が起きるかといえば、女同士のいじめ。何をするわけでもないシカトが始まる、ただ男が騒いでいるのが気に食わないだけなのだ。授業で二人組まなきゃいけないとき、体育、先生から指示○○さん、みおさんと組んで、いやいや組んで体操をする。意地でも授業に出た。 「死ねばいいのに」  それでも何とかやってきた。修学旅行、グループを組め、誰も相手にしない、男子がちゃかす、女子と組んでもいいですか。行きたくなかった。たかだか東京へ行って何が面白いのだろう、○○―ランド、千葉県、ハア、何が楽しいのやら。  先生に相談するも、授業の一環。 「遊びに行くのがですか?」 「何で行きたくないんだ」 「おかね、返って来るかと思って」 意味ねーし。ばっくれた。  母親が呼び出される、そのたびに泣く母親。  高校は、女子高に行きたかった、だが、私立、そんなお金家にはない、公立、制服は上下別、何とか女子の多い学校へ入る、一年我慢すれば、女子だけのクラス、その希望も打ち砕かれた。    高2になった時新任の保健の先生、悩みをやっとわかってもらえる大人に会った。いろんなことを相談した、体育は女子だけだが、運動会やその他の行事で運動着、ショートパンツにТシャツは嫌だった。大きい胸はそれだけで迫力がありすぎ、ブラはベージュ、ババくさいのが一番いい。暑い時でも長袖のジャージを着た、出来るだけ制服でいられるようにしてもらった。女子はそれを、男をつる道具と見た。又嫌がらせが始まる、保健室に入り浸る日々、友達と呼べるものは作らないようにした。その頃から意識した。大人の男の視線。  教師たちの目は怖く大嫌いだった。授業や何もない時に見回りの名目でのぞきに来る保健室になってしまい、新任の先生は飛ばされた。  ぎりぎりの卒業単位を取る、中間と期末のテストだけ参加、学校にも外にも出なくなった。やりたいことはいっぱいあった、でもそれを押し殺した。怖かったから。何からも逃げたかった。逃げられるものは何でも使った。 父親の顔もいつしか男の顔へと変貌した高校三年の冬、母は離婚した。 嫌な思い出ばかり。
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