オススメの酒(あくまで一例)

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オススメの酒(あくまで一例)

 店主が一拍おいて、答えた。 「ちょうど、無濾過生原酒が入荷しています」 「じゃあ、それで」 「――お待ちください」  口の端が持ち上がり、笑みめいたものが見えたと思った。 しかし、確かめる間もなく、店主は踵を返し行ってしまった。  店主が酒を運んで来た。 一合徳利とお猪口を二個とを、テーブルの上に置く。  酒器は揃いのもののようだった。 陶芸に詳しくない俺には、何焼きかまでは分からなかったが。  「特別純米無濾過生原酒・儀助。奈良の酒です。純米吟醸のよりも、こちらの方がしっかりとしていて辛く感じると思います」  店主の説明は、淡たんとしていた。 淡たんとし過ぎていて、押し付けがましいところが全くなかった。 「へ、へぇー奈良の酒か。奈良って、日本酒発祥の地って言われてたよな?確か」  いわゆる、諸説アリというやつだった。 「そうらしいですね」   さすがの店主も、客との雑談に応じる際には雰囲気が和らぐ。 かろうじて笑いと呼べるようなものを、スッキリと整った顔に浮かべる。 ――素直にカッコイイとは思うが、残念なことにタイプではなかった。  俺はトイレに行くついでにカウンターへと立ち寄り、中に居る店主に水を二つ頼んだ。
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