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オススメの料理(以下同文)
そこまで言って、俺はふと思い付いた。
「――今夜は悪かったな。料理、まだ出てくるはずだったんだろ?」
この店の料理は基本がつまみ、つまり酒の肴仕様だった。
追加も出来るので、ヤツが食い足りないようだったら、そうしようと思っていた。
――それがまさかの途中退場、文字通りのコースアウトだった。
何でもないように、店主が応じる。
微かに笑みめいたものを、端麗辛口の顔に浮かべていると思うのは、俺の気のせいか。
「後はタケノコの味噌煮と天ぷら、それとご飯と汁物とで〆でした。まかないにしますから、大丈夫です」
事も無げそのものの店主の口調に、俺は心から安心する。
「ありがとう。又、来るよ。榛名さん」
「お待ちしています。――お連れの方も、ご一緒に」
「・・・・・・」
俺は店主の、榛名さんの言葉の最後を、まるっきり聞かなかったことにした。
タクシーが来て店を出ようとした俺を、榛名さんは呼び止めた。
コンビニのような白いビニール袋を差し出してくる。
「タケノコご飯のおむすびです。夜食にでもしてください」
「わざわざ済まない。――ありがとう」
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