雨乞いの乱

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 むかしむかしのそのまたむかし。  あるところに、日照里村という小さな村がありました。  ある年のこと、村は深刻な水不足に陥りました。雨が降らなくなってしまったのです。  なにしろここは、人呼んでひでり村。  ひのてるさとの村という立派な名を持つ村ですが、お日様の深い深い寵愛を受けたばかりに、雨が少ないことでむかしから有名でした。  これはむかしむかしのそのまたむかしのお話ですが、そのまたさらにむかしから有名なのです。  そんな土地柄ですから、数日程度の日照りであれば、村人たちにしてみればこっぱのひ。  土地の神様に感謝と雨のお願いをしながら、名付け親のご先祖に少しばかりの恨み言を吐きながら、懸命に田畑を守るだけです。  しかし、いくらお祈りしようとも、川から水を引いてこようとも、今回ばかりは雨の降る気配はありません。  ついには村の生命線である川まで、痩せてきてしまいました。  困り果て、ご先祖への呪詛も尽き果てた村人たちは、総出で土地の神様へ雨乞いをしました。  村の人口約四百人の内、動ける大人のほとんど、二百人あまりを動員した、本気の、決死の、あるいはやけくそとも言えるお祭り騒ぎです。  どうかどうか、たった一日で構いません。  村に雨を。田畑に雨を。お恵みを。  夜通し祈り、歌い踊った村人たちが目を覚ますと、なんと雨が降っているではありませんか。  めでたしめでたし、めでたかない。  お話はここからが本番です。  雨が降ったにもかかわらず、怒りに燃える村人たちと、彼らの手でお社からずるりと引きずりだされ、憤怒の形相で姿を現した土地神様の、直接対決のはじまりはじまり。
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