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「やーん!縁どうしよー、楽しすぎて訳わかんないですー!」
いつにも増してハイテンションな恐神縁を従え、四之宮紫音は久々に繁華街に来た。目的のわからない大勢の人。何カ国語もが飛び交う喧騒。紫音はこの雰囲気が好きではなく、生来の面倒くさがりも手伝って積極的に街に出ることはないのだが…
「あのね縁。子守じゃないのよ。私、子どもはいらないんだから」
「だって一緒に買い物なんて嬉しくて死にそう!先輩だーいすき!」
紫音は、縁の押しに負けて買い物に付き合わされたのだった。揃ってタピオカドリンクを片手に歩く。縁は紫音の手を握り、時折紫音の周りをクルクル回ってはキュッとしがみつき、全身で喜びを表現する。
紫音が友達と一緒に出かけるのは、詩乃が生きている時以来。変わり者の紫音とて19歳の女子大生だ。仏頂面の陰で楽しんでいるようでもあった。
だがプラスに対しマイナスが生じるのも世の常。2人の親しさにぎりぎりと嫉妬している者がいた。紫音の唯一の友達…であったが、縁の台頭で立場が危うい、霊魂の志垣詩乃だ。
「危うくないわー!あんのクソガキ、私の紫音にべったりと…あ、また手を握って!妬ましい!きー!」
だが今日の詩乃は2人に近づけない。霊魂にも調子の波があるのだ。
「ちっ。今日は現世にいるのがキツイわ。戻るか」
不調の詩乃は渋々、あるべき世界に戻る。その嫉妬心を知ってか知らずか、2人は楽しげな女の子でごった返すファッションビルに入っていった。
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