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倉庫や会社が建ち並ぶ、人けのない1本道の路地の真ん中に差し掛かった時。背後から、マフラーが付いているのか怪しい騒音を垂れ流すミニバンが接近した。そのまま通り過ぎると思いきや、スキール音を伴って急停止し、2人の進路を塞ぐ。
内外で無駄にビカビカ光るLED。今時珍しいクリアテールが下品さと安っぽさを助長し、狂った音量で鳴るレゲトンに嫌な予感は極大になる。
やがて右ドアから若い男が降り立った。マスクで顔はわからない。
「おう姉ちゃんたち、俺らと遊ぼうや。あー?んだよこっちはガキかよ」
2人は瞬時におぞましさと危険を感じ、踵を返して逃げようとする。が…しかし。歩いてきた方向に振り向くと、もう1人の男が待ち構えていた。こちらもマスクをかけている。
彼らが日常的に繰り返しているのであろう、手慣れた拉致のルーティン。紫音と縁は、恐怖と絶望で顔を見合わせた。
「残念だな、こっちも行き止まりだ。ああそうだ、俺ロリも余裕だよ。ハハッ」
車から現れた赤い服の巨漢が紫音を。挟み撃ちにした長身痩せ型の帽子の男が縁の腕を掴み、乱暴に引き寄せる。縁の買い物袋が破れ、服が路上に散らばった。
「きゃっ!何よあんたたち!先輩を離せー!バカー!」
「最近、強姦殺人の噂があったわね…」
時に悪辣で破壊的な紫音ではあるが、頭脳戦で先制しない限り、ただのか弱い女子だ。暴漢の力にかなうはずもなく、2人は全開のスライドドアから車に押し込まれそうになる。
「嫌だー!汚い手で先輩に触るなー!」
「うるっせえな、子どもだと思ってりゃ図に乗りやがって。黙れ!」
帽子男は力任せに縁を往復ビンタする。縁は腕を掴まれたまま、痛みと恐怖で固まった。
それを見た紫音に、激しい怒りが沸き起こる。自らへの暴力なら無感情でやり過ごせるが、自分を慕う縁への暴力は別だ。紫音は自分を捕らえる赤服男に、それでもなお静かに告げる。
「あなたたち、小学生への暴力や誘拐がどれだけ重罪か分かってるの?」
「何言ってんだ。お前も人生オワタだ、関係ねえだろ」
「そっちのロリコン!あんた異常性癖者として社会的に終わる覚悟はできてる?」
「そ…う…」
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