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諭すようなブラフ、毅然とした紫音の態度に男たちは一瞬たじろぐ。紫音はその隙を見逃さず、バッグから手術用のメスを取り出し、帽子男の二の腕に力いっぱい切りつけた。男は驚きと痛みで、縁を掴む手を離す。
その瞬間、紫音は赤服男に腕を掴まれたまま無理に縁に近づき、耳打ちした。
(先に逃げて。あなたたちを信じてる)
「い、嫌だよぉ…紫音先輩…うああああああ!」
縁はどうしていいかわからなかったが、紫音の言葉を信じてひたすら走る。そして考える。
(紫音先輩…胸が潰れそう。でも確かに、2人同時に拉致されれば終わりだった。先輩はいつも正しい。私が打ち破るんだ!)
自分を逃すための紫音の機転と心を、無駄にはできない。縁は大粒の涙を流しながら死ぬほど走った。
「このガキ!待てコラ!」
赤服男が叫ぶも縁はすばしっこく、あっという間に闇に消えた。タトゥーまみれの腕を深く切られた帽子男はしばらく悶絶していたが、怒りの表情で紫音に近づく。
「このアマ…」
「よせ。確かにガキは面倒だし、警察なんてすぐには何もできねえ。まあ今日の収穫はこいつでいい」
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