【十六夜・月齢15.3】

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美桜は破願した。脳裏に浮かんスだトーリーは、かぐや姫は竹から生まれたが、優兎はウサギの腹を借りて生まれたのかもしれないと言うファンタジーだ。日本では月にはウサギが住むと言うのだからより現実味のあるファンタジーだろう。 「あ、でも──」 かぐや姫はいずれ月へ帰る、ならば優兎も帰ることになってしまうではないか。 (──そんなの──嫌だな) 思った時、優兎が不思議そうな顔を傾けているのが見えて、慌てて首を左右に振る。 「何?」 優兎は更に問い詰めたが、美桜は笑って誤魔化す。 急激に不安が増した、かぐや姫は月を見て泣いていたはずだ、優兎は浮かれて踊り出すが月に焦燥感を抱くのは同じだろうと思えた。 (まさか……ね) ひとり納得した時、腕をぐいと引かれる。 「え……っ!」 そのまま優兎を軸に一回転させられた、どうやらダンスの一端だったらしい、今度はくるくると自転させられた。 「ちょ、ま……、目が、回るーっ」 訴えるのに優兎は笑うばかりだ、大きく、小さく回転し、体を上下させて空中遊泳を楽しむ。 いつまでも、いつまでも──。 そんなふたりのダンスを、月だけが見ていた。
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