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「もうちょっと月明りを浴びてから帰る」
「もう、そんなにしょっちゅう浮いたり下りたりしてたら、誰かに見られるよ」
美桜は辺りを見回した、幸い今は人はいないようだが。
「もちろん人の気配があればやらないけどね。案外まともに見ちゃっても、気にしないみたいだよ」
そう思っていても無茶はしないが、やはり突然鉢合わせと言う事がなかったわけではない。しかし優兎がなにもなかったように挨拶をすれば、相手も首を傾げながらもそれを問いただしはしない、現に噂になったこともない。
「そんなものー?」
「そんなもの」
優兎は微笑む、やはりどこか人の常識から外れているような気がしなくもないが。
「まあ……気を付けてね」
「うん、美桜も」
何に気を付けるのよ、とは思ったがもう聞かなかった。優兎はもう空へと浮かび上がっていた。それでも美桜が手を振れば、優兎は視線を落とし手を振り返し最上の笑みの残して空の高みを目指して飛んでいく。
じっと見ていたが、確かに暗闇にその姿は紛れてしまう。その姿が完全に見えなくなるまで美桜は見送っていた。
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