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よくそばにいる人だ、おしゃべりをしていると楽しいと感じる人も入るだろう、一番はみのりや千波のような存在だと判る。挨拶の時の声もとびきり元気になってしまうような相手だろうと思えた。
(特別な──)
仲がいいよりももっと近くに感じる存在だと判った。用もないのに声をかけたくなったり、触れてみたくなったり、あるいは触れられると嬉しくなったり──。
少し怒った顔のままみのりと話している美桜が目に入る。夕べも優しく撫でられ気持ちがよかった、野原が来なければ時間を忘れて今でも撫でられていたかもしれない。それに空中散歩を楽しんだ時に抱き締めた美桜の体は、手を離すのが惜しいほど心地よかった。
両親にも撫でられ、抱き締められることはあるが、それとは違う感情だ。そして美桜以外の者でも感じるかと言えば、違うと思える。
(美桜は──)
「とにかく直しなよ」
美桜は言いおいて正門へ向かう、みのりもそれに続いた。
(え──待って)
きちんとした確証が得られない、それでもこのまま美桜と別れたくなかった。
(君は──君とは!)
咄嗟に二の腕を掴んで引き留めていた。
「はい?」
美桜は不機嫌そうに下目使いで長身の優兎を見上げる。
「美桜!」
叫んでいた、君が特別だと伝えたくて。
「羽田サン!」
姓は覚えている、敬称も知っている。
「ええ、いきなりサン付けの他人行儀~?」
みのりは呆れて笑うが、納得はしているようだ。
「美桜!」
「んもう、なに……」
優兎は満面の笑みで美桜を引き寄せる、そのまま空に飛び出しそうな勢いに美桜は驚いた。
「え、ちょ……っ」
「おやおや、あらあら、まあまあ」
みのりはいやらしく笑う、判りやすい言動この上ない。
「美桜、好きだ!」
「──は!?」
突然の告白に驚いた。学校の正門前だ、多くの生徒がそこへ飲み込まれていく、その足が一斉に止まった、正門前で生徒を迎えていた教諭も目を見開きふたりをみる。
「俺、美桜、好き!」
まるでテレビで好きなタレントが出てきたときのような『好き』だった、あるいはコンビニでお気に入りの食べ物を見つけた時のような。
「え、中田、何を言……っ!」
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