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【寝待月・月齢18.3日】
月曜日、美桜が眠い目を擦ってご飯を食べているとインターフォンが鳴った。こんな朝早く誰だろう、と思っていると、
「美桜、あなたを迎えに来たんですって」
言って母がにやりと笑う、その意味は遠くから見たモニターでも判った、
優兎が映っていた。
「え、な……!」
美桜は箸を握り締めたまま慌てて玄関へ向かう、ドアを開けると優兎はニコニコして手を振った。
「おはよ、美桜。一緒にガッコ行こ!」
キラキラした瞳と笑顔に、美桜はがくりと肩を落とす。
(小学生かー!)
「美桜ぉ、どなたぁ? 紹介しなさいよぉ」
声にどきりとする、母は背後から左右に体を傾け、美桜越しに優兎の姿を確認する。
「え、紹介って……っ」
「中田優兎、18歳!」
優兎は元気に自己紹介する、それに母はますます笑みを深めた。
「ボーイフレンド?」
言葉に美桜は背筋を伸ばす。
「ちが……!」
美桜は否定するのに、
「はい!」
優兎は嬉しそうに肯定した。
美桜は青ざめて優兎を睨むが、キラキラした笑顔に言葉になにも言い返せない。
「まあ、ハンサムでいいわねえ。もう、美桜、なんで内緒にしてたのー?」
母はいやらしい笑みのまま美桜の背をつつく、美桜は身を捩って拒絶した。
「内緒にしてたわけじゃ……!」
よく判らないまま好きだと告白されたし、夕べも夜遅くに出かけたが、それは交際開始となるのか。
「早く歯を磨いてきなさい、いつまでも彼氏を待たせちゃ駄目よ」
母はにやにや笑いながら美桜の背を押した。
美桜は先に行って、と言いかけてやめた、わざわざここまで来てくれた優兎を追いかえすようなことはできない。
食べかけの食事をそのままに箸だけをテーブルに置いて二階へ上がると、身支度を整え玄関に戻った。
優兎は玄関の上がり框に座り、お茶まで出してもらってくつろいでいた。下りてきた美桜を見つけ、また眩しい笑顔を見せる。途端に心臓が、きゅん、となるのを感じた。
「いってきます」
美桜は母に声をかける、母も玄関先で正座をして優兎と話し込んでいた。
「はい、いってらっしゃい」
優兎から湯呑を受け取る。
「また、ゆっくりいらっしゃってね。美桜のどこがよかったとか、そういうの聞きたいわー」
「美桜、優しい!」
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