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俺は部長の肩を軽くゆすり、起こすことにした。
「部長、小倉部長」
「んん……。あれ、松下…くん?どうしてここ…に?」
あーーーやばい!部長の目がトロッとしてて、声が掠れて、凄くセクシー!!ってダメダメ、それどころじゃない!
「不法侵入してごめんなさい。訴えるなら治ってからお願いします!おれ、どうしても心配で…。部長、とりあえず水分取りましょう。スポーツドリンク持ってきますね!」
おれはペットボトルにストローを刺して渡した。
部長は喉が渇いていたのか、受け取ってごくごく飲み始めた。
「部長、一度熱を計りましょうか。今キッチンにあった救急箱からお借りしました。はい、どうぞ。それから何か口にできそうですか?薬飲みましょう。」
「食欲は全くないんだけど…ゼリー買ったからそれだけ食べようかな…。」
部長は横になったまま、受け取った体温計を脇にさしながらそう答えた。
おれは冷蔵庫からゼリーを取り出す。
部長も買ってきたと思われるゼリーがあって、それが全く同じものだったことに笑みを浮かべる。
ゼリーを開けて、小さい器に移し替えてから部屋に戻る。そのままじゃ食べにくいかなって思って。
「部長、ゼリー持ってきました!おれも実はお見舞いでゼリー買ってきたんですけど、そしたら全く同じのが冷蔵庫に入ってたんでびっくりしちゃいました!ゼリーといえば桃、ですよね!へへ」
具合が悪いって知ってるのに、ついつい嬉しくて報告しちゃう。でもおれは知ってる、部長もちょっと嬉しそうにすることを。
前に以心伝心だとか言ってたの聞こえたこともある。
「ありがとう松下くん。以心伝心ですね、ふふ」
…ほらねっ、言ったでしょ!
熱のせいか笑顔がいつもよりふにゃってなってて部長がすごく可愛く見える。つられて笑う。
部長がゼリーを食べてる間、小次郎にご飯をあげたことを報告する。
部長の熱は38.6度だった。また上がるかもしれないと思うと怖い。でも、おれがいる!大丈夫だよね!
これもまた救急箱にあった市販薬だけど部長に渡してちゃんと飲むまで見届けた。寒くないか聞いて、新しい冷えピタも念のため渡す。それと首に巻いてたタオルを外すと柔らかくなってた保冷剤があったので、冷凍庫から凍ってるやつを違うタオルに巻き直して渡した。
「色々ありがとう、松下くん。」
「おれが側にいたかっただけですから!それから、おれ今日ここに泊まってもいいですか?」
離れたくない一心でそう告げる。
部長は少し困ったような表情をしていたけど、明日ちゃんと仕事に行くんだよって言ってたから多分OK貰えたと思う。
おれは夕飯を買いにコンビニへ行ってくることを告げて家を出た。鍵は借りた。ちょっとテンションあがる。
牛丼を買ってイートインのスペースでパパッと食べる。他にも一応パンツと、追加でゼリーとか新しい冷えピタとか色々買った。
そっと家に帰ると、部長はまた眠りについていた。
おれね、家に来て気づいたことがあるの。
こないだ来た時に歯ブラシ買ったんだけど、それがまだ洗面台に置いてあったの!違う人のってこと、無いよ…ね?色も同じだし。これって、どういう事なんだろう。おれ少しは期待してもいいのかなって。
思い出してにやけそうになりながらソファで仮眠する。アラームを5時間後にセットした。
早く良くなりますように。
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