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世界の終わりに何をする?
世界が終わる日、あなたなら何をする?
美味しいものを食べる。
豪遊する。
大切な人と過ごす。
あるいは恐怖に体が竦んで、何も手につかないかもしれない。
私は──天野夜凪は、そのどれでもなかった。
その日。きらきら光る星が空を割り、無数に降り落ちて来た世界最後の日。地上は炎に包まれ、夜空の底を焦がして、夜と混ざりあって空を紫色に染め上げていた。
そんな中で私は、星の直撃を受けて瓦礫の山と化した自宅から這々の体で逃げ出し、人気のない寂れた公園のブランコに座って、ポケットに入っていたスマホで「あの子」のスペシャルライブ配信を見ていた。
スマホの小さな画面の中で歌い踊るあの子は、目の覚めるようなブルーのワンピースををまとっている。金色のロングヘアがダンスに合わせて、なびき、精緻な人形のように整った顔が微笑む。しなやかな足でステップを踏むたびに、パニエで膨らませたスカートの裾がふわりと揺れる。
夢のように美しい少女だった。私は美しいものが好きで、だから、この子のことも好きだった。こんな美しいものを見られるのなら、世界最後の日もそう悪くはない。そんな風に、考えてしまえるくらいには。
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