(序)

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(序)

 あしのしたで、とけかけた しもばしらがつぶれて、ずちゃ……っずちゃ……っと、いやな おとをたてる。  くつがぬれて きもちわるいけど、たちどまったら だめなんだ。  ぼくは、しろい きりが ただよう くらやみのなかを、いっぽ いっぽ すすんでいく。てのなかにある、ちいさくて、まるいつぶつぶをにぎりしめながら。  これだけが、ぼくの ぶき。  その、ちいさな かたさを たしかめながら、ゆっくりと、まえをみて、あるきつづける。  だって、あぶない。  とまったら、おいつかれて しまうから。  おいつかれて――……、たぶん、ぼくは、たべられてしまう。  ほねまで、ばりばりって。  かみのけを つかまれて、はだを さかれて、いっぱい ちがでて。  そんなめに あったことなんか ないけど――、でも わかるんだ。  にくに、ほねに、ばけものの きばが くいこんでくるときの、あのかんじ。  ぼくは、それを しっている。
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