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城内を歩きながらヴァレリーは見たことのないエクセリアの話に夢中になっていた。
本を読むのが好きなヴァレリーにとって、エクセリア湖に住むというウォータードラゴンや城の北にある島にすむドラゴン族、北の半島にはコボルトの村もあるという。
さらには、エクセリア湾にはマーマンや人魚などの海中の民がやってくるという話をきいて
ヴァレリーは目をキラキラさせた。
「エクセリアに行ってみたい」
「いつでも歓迎しますよ、その時はわたしが案内します」
「そうそう、エクセリア湾で養殖されている真珠は世界一の美しさと言われてます。是非それも見せてあげたい」
「真珠かぁ、お母様に合うだろうな」
きっとヴァレリーにも合いますよと言いたかったがそれは黙っていた。
楽しく話をしていると庭の中心にある温室に着いた
中は色とりどりのバラの花が咲き乱れていた。
「見せたいバラがあるんだ」
そういってテオドールの手を掴もうとしたときに
赤いバラに手が引っかかってしまった
「あっ」ヴァレリーは指を抑えた。
抑えている所を見ると白く形のいい指の先から真紅の雫が流れていた、反射的にヴァレリーの指を口に含む。
驚くヴァレリーにあわててあやまった。
一瞬驚いたが指先にのこるテオドールの温度に少し照れながらゆっくりと顔を横に振り
「このバラは嫌い、美しいけど棘があって王妃様のよう」
「僕が好きなのは母様が好きなアレッサというバラ」
そう言うとテオドールの手を取って歩き出す、
温室の中はむんと甘い香りが漂う。
ヴァレリーに手を引かれて温室の最も奥へ行くと、そこには薄いピンクに黄色が溶け込んだ上品で優しげなバラが咲いていた。
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