青木 良

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 彼――青木 良は、とても変わった存在だった。いつも一人で、誰とも話さず、つるまず、休み時間はぼうっと窓の外を眺めるか、文庫本を開いて、読書をしている。  人付き合いが苦手で馴染めないという雰囲気ではなく、彼は好んで一人でいたように思えた。そんな彼は、クラスで浮いていた。けれど誰もそれを咎めなかったし、その浮いた様子は、逆に彼を際立たせた。  彼は、ただの変わった生徒ではなかった。どことなく、普通の高校生と違う――そんな異質で、不思議なオーラがあった。近寄りがたい。だけれども近寄りたい。近づいてみたい。でも近づけない。不思議な引力。  だから彼が一人でいても、誰も彼を『ぼっち』などと揶揄する人間はいない。浮いていたけれど、どこか一目置かれた存在。  秀もまた、多くの生徒と同じように、彼――青木良を、少し離れた場所から、眺めるだけだった。もちろん、彼のことは気になっていたし、機会があれば話してみたいとは思っていた。
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