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青木良と向き合っている女子生徒のほうにも、見覚えがあった。確か、あの子は、今年のミスコンに選ばれた三年生の先輩じゃなかったか。
「わ、分かった……時間、作ってくれて、ありがとう」
女子生徒は震える声でそう告げて、ぺこりと頭を下げると、足早にその場から去っていった。
――あいつ、女子に、人気あるんだな。
それは同性の秀にも、分かる気がした。青木良は、人の目を引く容姿を持ち合わせいる。まず、背が高い。ゆうに180cmは超えているだろう。ひょろりとしていて、足も長く、いわゆるモデル体型だ。顔立ちも、肌が白く、目元は涼しげで、『かっこいい』というより『きれい』という印象。
それに加えて、あの、人を惹き付けてやまない、けれど近づかせない、独特のオーラ。
「なぁっ!」
秀は思い切って、声をかけた。青木良は、くるりとこちらへ振り返った。
「――なに?」
初めて目が合った。秀はどきりとした。
「なんで……フったんだ?」
秀の質問に、青木良は、ゆるりと首を傾げた。
「なんでって……どういうこと?」
水みたいな、さらさらとした、不思議な声色だった。
「だって、あんなに可愛い子じゃん。フるなんて、もったいなくね?」
あぁ、そういうことね、と彼は呟き、一息置いて、気怠げにこう言った。
「――興味が、ないんだ。恋愛とか、告白とか、付き合うとか……そういう類のことに」
ため息混じりに呟いたその解答が、しいんと音のしない空間に染み込んでいく。
「興味……ねぇの?」
「うん」
「……変わってるな、お前」
「そうだろうね」
そうだろうね、という生返事もまた気怠げで、『変わってる』と指摘されたところで、彼にとっては至極どうでもいいこと、らしい。
――なんで、そんな風に、容易に受け流せるんだろう。
『変わってる』なんて言われて、いやな気持ちにならないのだろうか。
気になる。彼が、とても。彼は、何を考えているんだろう。どんな風に物事を捉え、生きているんだろう。
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