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学生の頃は今よりもお金が無かったからユニクロにはよくお世話になった。デートの時にこの店に立ち寄ったことも何度かあった気がする。
「なんだかこうしていると学生時代のことを思い出すね。元気だった?」
「う〜ん、まぁ普通かな。普通に社会人やってるよ。そっちは?」
「私も、普通かなー。会社に行って、クタクタになって、家に帰って寝る生活?」
「みんな一緒だよなぁ。……そういえば、彼氏とは上手くやっているの?」
不意打ち気味な僕の質問。君は弾かれたように顔を上げた。
「――彼氏? 何のこと?」
「いや、だから、ほら。俺たちが別れるきっかけになった、会社の先輩? いたじゃん? ……あれ? 付き合ってないの?」
「何言っているのよ。――付き合ってないわよ。……付き合ってなんかないんだから」
そう言うと君は視線を落として唇を尖らせた。
「……あ、なんかごめん。そっか。そうだったんだ」
「うん。そっちは? もう、新しい彼女とかできた? ……あ、もしかしてもう結婚しているとか?」
「無いよ、無いよ。いまだに俺が付き合ったことがあるの女性は生涯で一人だけだよ」
「あ……そうなんだ? そっか――」
「うん、そっちは?」
どう言ったものか思案するように君は少し首を傾げる。そして一つ溜息をついた。
「私もあれから三年間ずっと独り身。ずっと彼氏がいない状況ですよ。――まったく、こんなにいい女が売れ残っているのに、世の男はどこに目をつけているんですかね〜!」
「――まったくだな!」
頬を膨らませた君に、僕は大きく頷き返した。
結局、君は普段着にとはじめに見ていたカーキ色のワンピースと白いブラトップをカゴに入れてセルフレジへと向かった。店の出口で僕は君を待つ。
セルフレジで商品をスキャンしてクレジットカードで支払う君。その姿は三年前に比べると少しだけ大人っぽくて、僕らはきっと少しだけ大人になったんだなって思ったりした。でも君のその一つ一つの動きや、髪を後ろにやる仕草は何も変わらなくて、そこには三年経って変わった君以上に、三年経っても変わらない君がいた。そんな君がいたんだ。
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