雨の日の怪獣

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 最初に現れたのは、確か私が四つか五つくらいの頃だったと思う。私が雨の日どこにも行けなくて駄々をこねているとお父さんは決まって「そうは言っても外出られないしな」と、ぶつくさ言いながら私の前から消えた。すると、なんだかガサガサと物音が聞こえてきて、ぬっと、私の前に全身茶色のけむくじゃらな怪獣が現れた。 「食べちゃうぞー」と、怪獣がのそのそと近づいてきたら私はきゃっきゃっと騒ぎ、部屋中を夢中で逃げた。そのまま私の気がすむまで怪獣との追いかけっこは続いた。そして、最後には私は怪獣に食べられて、怪獣のお腹の中でそのまま眠った。  それは、みすぼらしい怪獣だった。お父さんが使い古しの茶色の毛布を被ってのそのそ動き回るだけのものだった。でも、小さい頃の私は雨が降ると怪獣が現れるのをどこか心待ちにしていた。  あの子を一人で育てようと決めた時、私は絶対に幸せにするつもりだった。誰よりも楽しい一日を毎日プレゼントして、私のことをいつも大好きって思ってくれる日々を過ごすはずだった。なのに今は何一つうまくいかない。高校生で美波を産んで一人でもちゃんと育ててみせると覚悟したあの日の決断は、結局周りが言うように世の中を甘く考えていただけのことだったのかもしれない。  トラックで配送の仕事をしながらひとりで私を育ててくれたお父さんみたいに素敵な親になるつもりだったのに、実際は娘に嫌われる一方だ。それだけなら仕方な
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