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今日はとってもいい天気だった。春らしい、ちょっと暖かい日。
朝の通学路を歩きながら、私は思わず耳を澄ませた。
鳥のさえずり、風の音、木の葉のざわめき。
雑音の無い世界は素晴らしい。
「おーい、由紀ちゃーん」
後ろから名前を呼ばれて振り返ると、親友の尾瀬茉莉香の姿が見えた。
小さい体で大きく手を振りながらこっちに走ってくる。
「茉莉香ー。おっはよー」
「おはよう」
かけてきた小柄な茉莉香は、走ってきたせいかほっぺが赤くなっていた。
ふうふうと少し息を整えながら、彼女は私の顔をじっと見つめる。
「……どしたの?」
「由紀ちゃん……最近キレイになった?」
「やっぱりそう思う? ちなみに、肘とか肩とか膝とかもつるつるなのよ」
「そうなんだ……良かったねぇ。由紀ちゃん、ずっと悩んでたもんね。すぐできちゃうって」
「うん。ここんとこね、自分でも毎朝感動してるの」
「そっかー、なんかいい薬見つけたの? 市販のは効かないーって喚いてたよね?」
喚くという表現にささやかな引っ掛かりを覚えつつ、あながち間違いでもないので苦笑いでスルー。
「ねえねえ、お肌見せてよぉ」
「いいよ」
小柄な茉莉香の為に、少し首を傾けてあげる。
茉莉香はその小さな手を伸ばして、私のほっぺをなでてくれた。くすぐったさに思わずぴくってなっちゃう。
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