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茉莉香が私のほっぺを堪能し終わるのを待って、私達は並んで歩き出した。
「ほんとに綺麗になったよね」
「うん、私もびっくりしてる。やっぱさ、市販の薬って効果薄いのかも」
「そうなの? あんなに宣伝してるのに?」
少なくとも私の場合は全然効いてくれなかった。
途中からは金をどぶに捨てている気分だった。
「うん、間違いないよ。効き目が全然違ったもの」
それは私の肌が一番よく知っている。だってこの肌はそのおかげでつるっつるなんだから。
私は一呼吸おいて、力を込めて言った。
「やっぱりね、人面瘡にはお寺さんが一番だよ」
「そこまでキレイに回復してると、説得力あるね」
「でしょ?」
「でも、お寺さんてさ一人で行くのは、ちょっと抵抗あるんだよね」
確かに女子高生が一人でお寺さんなんて、ちょっと勇気いるよね。
参拝客の中に知り合いがいたら、ちょっと気まずいし。
「でも大丈夫!! お坊さんがね、すっごく丁寧に話を聞いてくれるの。だから、安心できるよ」
「そうなんだ」
「例えばね、私の肌って集霊肌なんだって。そういうのって、普通分かんないよね」
私がそう言うと、茉莉香は合点がいったと言わんばかりにポン、と手を一つ打った。
「あー、そう言えば由紀ちゃんて、心霊スポットの近くに行っただけでお肌ピリピリするけど、原因分かんないって言ってたよね」
「それがね、お坊さんに話したらきちんと分かったのよ。心霊スポットには近づかないこと、と言われたわ」
「そっかー。まあ、肝試しはねー。そうじゃなくってもしない方が良いって言うしねー」
私は好きなんだけどなー、と唇を尖らせる茉莉香の肌はつるつるしている。
聞いたところによると、ただの一度も人面瘡が出来たことは無いんだとか。
彼女は多分、霊的に凄く鈍感なんだろう。悩み多き女子高生的には、大変に羨ましい話だ。
「ちっちゃいのがたくさんできてたもんねー。何言ってるかは全然分かんなかったけど」
「それが一斉にしゃべるでしょ? とにかく煩いの」
「ああ……分からなくもない」
「そうなのよ。顎とか頬骨の近くとかにできちゃうとさ、酷い時には骨伝導でダイレクトに耳に来るからね」
あれは単語の一つ一つまで伝わってくるから本当に嫌だ。
「寝不足になっちゃうね」
私は大きく頷いた。
何度それで授業中に居眠りしちゃった事か……。
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