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「へい、魔法の鏡。世界で一番美しいのは誰?」
「女王、あなただよ」
「本当に素直! お前だけだよ本当のことを言ってくれるのは」
女王は嬉しくなり、うきうきと鏡を磨きだす。
「いつも僕を磨いてくれてありがとう」
「いいのよ、美しい私をさらに美しく映すためだもの」
吐息をかけて白く曇らせ、柔らかいクロスで鏡を磨く。隅から隅までピカピカの完璧。女王は満足気に自分の顔をまじまじと見つめる。
「ますます綺麗になったわ」
「女王がよく見えるよ。とても綺麗。あ、待って、女王ごめん。綺麗になったからよく見える。世界で一番美しいのは女王じゃない」
「なんですって? どこの誰よ?」
「美しいのはこの僕だ。こんな綺麗な鏡、世界で一番美しいに違いない」
女王は鏡を殴り割った。
家来に命じて割れた鏡を片付けさせた、と思っていたらある日、女王は床に手のひらほどの鏡の破片を見つけた。埃がかぶり、薄汚れているが、間違いなくあの鏡だ。
「まったく、私の家来はこんな大きなゴミも片付けられないのかしら」
乱暴に手で汚れを取り除き、鏡を見た。汚れで微かに顔がボヤけている。
「やあ女王久しぶり。あれ? 最近キレイになった? 」
女王は鏡を踏み潰した。
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