青春の味

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「で?」 「は?」 「優等生、何に悩んでんの」 気が付けば、丸付けをしていたはずの担任は、ゆるりと片頬杖をついて私をじっと見据えていた。薄い唇から落ちた言葉に、目を見張る。動揺を誤魔化す為に、睫毛を伏せて下を向く。そして、口角を上げて言う。 「え、別に何も悩んでないですけど」 「嘘つけ」 「本当ですけど」 「あっそう」 ああ、この人も、こうやって笑って見せればあっという間に引き下がってしまうんだな、少しだけ心がすぅ、と冷たくなる音がする。その温度から目を逸らすように、伏せていた睫毛を上げて担任を見た、刹那。 息が、止まった。 「じゃあ、何、その顔」 そう言ってゆるりと触れられた、私の頬。冷たくて硬い手の甲が、私の柔らかな頬を撫でる。かぁ、と血が上る。ざわ、と身体中の血液が忙しなく流れる。心臓は、言わずもがなだ。 担任の手の冷たさに、心が沸騰した。世界が、歪む。
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