青春の味

11/16
前へ
/16ページ
次へ
「先生、照れてます?」 「うるせぇな、柄じゃねえことさせんなよ、苦手なんだよ相談とか」 不貞腐れた表情でぼそりと落とされた言葉に、思わずくすりと笑ってしまった。 「笑うな、人が折角雨を絡めて風流に励ましてやったんだからよ」 「ごめんなさい」 「ま、お前の笑いになったならいいけどよ」 そう言って伸びをして、「で」と言葉を紡ごうとした刹那。 「せんせー!!」 でっかい女子の声が外から聞こえた。驚いて身体を強張らせた私の腕を担任は掴む。 「え」 「静かにしてろよ」 そう言って彼は、隣の理科準備室に私を押し込んだ。埃と奇妙な薬品の香りが鼻を刺す。相変わらず、雨はやまないけれど、ひとつ膜に包まれたように少しだけ雨音が遠ざかる。 代わりに私の耳に入ってきたのは、女子生徒の声と、担任の声。思わず、聞き耳を立ててしまう。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加