青春の味

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「先生、聞いてよ」 「何だよ、俺だって忙しんだぞ」 「えー、先生やる気なーい」 「俺の辞書には熱意って言葉と相談って言う言葉はない」 その台詞に息を呑んだ。何で。さっき、あんなに聞いてくれたのに。 「じゃあ一個だけー」 そう言ってその高い声が落としたのは、「好きって何?」という質問だった。ハッとして理科室と準備室を隔てている古びたドアに耳を当てる。 「……どしたよ、いきなり」 「彼氏の事、好きかどうか分かんなくなっちゃってー」 「そう思い始めたらもう駄目じゃね」 そう言ってからからと笑う担任は、先ほどまでの無気力な姿が嘘の様に、明るく笑って言葉を落としていく。 「そうだなぁ、恋として、って事だろ? 俺の好きはなぁ」 聞こえてくる言葉に、目を見張る。 だって、嘘、そんな事。 思わずドアから距離をとる。雨音が私の聴覚を支配してくれることを願う。けれど、こんな時に限って、少しだけ雨音は弱まるのだ。
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