青春の味

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「ここからはお前にしか言ってやんねぇからちゃんと聞けよ」 私を腕に閉じ込めた彼は、そう言って、耳元に唇を寄せる。 「つい、抱きしめたくなる」 耳朶を揺らす低い声に、熱が灯る。心臓が暴れ馬の様に脈を打つ。ああ、彼に、聞こえてしまう。そう思った刹那、彼は少しだけ隙間をあけて私の顔を覗き込むように見下ろす。 「俺だけのもんに、したくなる」 そして、とんっと私の唇を弾いて、そのまま指でなぞった。ぞくり、と甘美な感覚が、私の肌を粟立てる。 「で、本当の相談事は?」 そのままの姿勢で、担任は私に向かって尋ねる。目を逸らそうとしても、頬を包んだその手が、許してくれない。その濡れ羽色の瞳が、私の視線を絡め捕って縛り付ける。 観念したように、吐息の隙間で、私は呟く。 「……好きな人が、います」 「ほう」 「……告白したくて、でも絶対叶わないと思ってて、だから毎日辛くて」 ぎゅっと唇を噛んだ。未来が消えてしまえばいいと思ったばかりなのに、今はもう、感情のベクトルは真逆を向いていた。 黙ったまま唇を噛み締めている私に、にやりと悪戯っ子のように笑った担任は、そっと言葉を落とす。
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