青春の味

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「……先生」 「何」 「……相談、してもいいですか」 ぽつり、ぽつりと曇天から落ちてくる雨音の様に静かに私の口から零れる言葉。 「その為に呼んだんだけど?」 そう言って私の頬から手を放す彼を、下から睨みつけた。 「如何したら、私は楽になりますか」 「………」 無言を貫きながら私をその濡れ羽色の瞳で見つめる担任に、一度タガが外れた私は言葉を投げつける。 「ある人は言います。泣くなって。泣いてもどうにもならないって」 「……」 「泣かなかったら、何か変わるんですか」 「……」 「でもある人は言います。泣けばいいって。泣いたら、強くなるからって」 でも、と私は息継ぎの間もなく言葉を紡ぐ。空から零れる雨の様に、言葉が溢れて止まらない。感情が暴走して止め処ない。 「泣いたって、何も変わらないですよね」
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