青春の味

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過去も現実も未来も、私が泣いたって、泣かなくたって、変わらない。でろでろ、ずぶずぶ、どろどろ、この恋に、春なんて言葉が遣えない事は、誰だって知っている。 「じゃあ、人間は如何して、生きているんですか。如何して、生きていかなきゃいけないんですか」 諦めようとした。嫌いになろうとした。けれど、それすら叶わない。 感情が伴わない笑みを身に着けて、泣くのを我慢して、時には涙さえも利用して、自分の心にすら嘘を吐いて。 「こんなに辛い想いをする為だけに、私は生きているんですか」 そうなのだとしたら。 「私は私の未来なんて、消えてしまえばいいと、そう思います」 「……観月」 ゆるりといつも通りに、担任は私の名を呼ぶ。再び伸びた指先が、私の頬をもう一度滑る。そして、彼の冷たい指を透明な感情で濡らす。 それをそっと見つめて、彼はふと顔を上げて私を見つめた。初めてこんなにも人に感情をぶつけた私は、その唇から次に落とされる言葉に、酷く怯えていた。
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