13人が本棚に入れています
本棚に追加
過去も現実も未来も、私が泣いたって、泣かなくたって、変わらない。でろでろ、ずぶずぶ、どろどろ、この恋に、春なんて言葉が遣えない事は、誰だって知っている。
「じゃあ、人間は如何して、生きているんですか。如何して、生きていかなきゃいけないんですか」
諦めようとした。嫌いになろうとした。けれど、それすら叶わない。
感情が伴わない笑みを身に着けて、泣くのを我慢して、時には涙さえも利用して、自分の心にすら嘘を吐いて。
「こんなに辛い想いをする為だけに、私は生きているんですか」
そうなのだとしたら。
「私は私の未来なんて、消えてしまえばいいと、そう思います」
「……観月」
ゆるりといつも通りに、担任は私の名を呼ぶ。再び伸びた指先が、私の頬をもう一度滑る。そして、彼の冷たい指を透明な感情で濡らす。
それをそっと見つめて、彼はふと顔を上げて私を見つめた。初めてこんなにも人に感情をぶつけた私は、その唇から次に落とされる言葉に、酷く怯えていた。
最初のコメントを投稿しよう!