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1.社内会議!!
「僕が今回プレゼンするのは、このVRゴーグルです」
勇気は会社の重役達を前に冷や汗を書きながら、プレゼンを始めた。
「今やVRは社会にとって重要な役割を担っています」
医療、軍事、ゲームなど。様々な広がりを見せるVR。
「では早速、実際に僕が体験してみます」
「勇気君って、いつも逃げてばっかり」
花子は冷たい目線を勇気に向けた。
「は、花子ちゃん……!」
勇気は花子にすがりつくように袖を掴む。
「私たち、別れましょう」
「そ、そんなの嫌だ!」
この間勇気はある事を考えていた。
「もう決めたことなの」
それは、実に単純明快な事。
「嫌だ嫌だ…!逃げてやる!!」
勇気の勇気による勇気の為の究極の現実逃避が今始まる……!!
「ちょっと!何するの!!」
「俺はぁぁぁ!!花子ちゃんを!!誘拐する!!!!」
勇気は花子を担ぎ上げる。
「ダメ!放してよ!」
花子はもがくが、勇気は譲らない。
「うおおおおおおお!!!」
「イヤッ!誰か~助けて~!!」
アパートの住民たちは、そんな彼等を一瞥し、そそくさと部屋に入っていく。
「お、大家さん!!助けてよ!」
「いつも元気でいいねぇ」
大家さんは、二人に向けてニコっと笑顔。
「よし、今からお出かけするよ!花子ちゃん!!」
「イヤ~!」
「気を付けてねぇ、遅くなる前に帰ってくるんだよ」
勇気は大家さんにウインクし、車を走らせた。
「わ、私をどこに連れて行くつもりなの!?」
花子は後部座席でもきっちりシートベルトを閉め、ポテチをつまみながら勇気に聞いた。
「ククク、それは今は内緒なのさ……!」
勇気はアクセルペダルを踏む力を強める。
「全・力・逃・走☆」
「マジ卍!!」
「さあ!ついたぞ!!」
店の前に掲げられた『Triumph』の文字。
「な、何なのここは……!?」
「説明しよう。このお店は、海外の1流ブランドショップだ!その洗練されたデザインは、多くの男女を魅了するぞ!!」
「いやわからないから!」
「……はて?」
「これだけじゃ読んでる人がどっちのお店なのかわかんない!!せめてカタカナ表記にするとか、なんか工夫しなきゃ!」
「どっちって……?」
「うぅ……、うぅ~ん……、その……ほら!2つあるじゃない!」
「なんの事だか」
「ええ…」
勇気は意気揚々と店の中に入って行く。
「いやあ、ワクワクするぞぉ~!」
「勇気君ははたして健全な男の子なのか、邪悪な男の子なのか……」
勇気と花子は共に店内を見て回る。
「ふへへ、これなんか花子に似合うんじゃない?ちょっと跨がってみてよ」
「だ~か~ら~。やめな?ホントに危ないから」
「ちぇっ」
勇気はさらに店内を物色。
「お、これは僕に似合うんじゃないかな」
そう言って勇気は商品をおもむろに被って花子に見せる。
「あーー!!もう!」
花子は商品を勇気から引き剥がす。
「もういい!出るよ!!」
「ええ~、もうちょっと見せてくれよ~」
「それも危ない!!」
…数時間後。
「ねえ勇気君、これ見て!似合うでしょ~」
「あ、別のお店ですからね」
「誰に言ってんの?」
「花子ちゃんが言う?それ」
花子は陳列された眼鏡を、片っ端から試着し、その都度勇気に見せていく。
「これは?」
「う~ん」
「これ!」
「う~ん」
「これなら!」
「最高。大きな鼻とダンディな口ひげが可愛いいと思う」
「えへへ、照れるなぁ。っておい」
花子は眼鏡を外し、勇気に擦り寄る。
「でも、こうして二人でお出かけできて楽しかった」
「僕もだよ、花子ちゃん」
「勇気くん……好き……」
「僕も……花子ちゃん」
突然、勇気からVRゴーグルが外される。
「……社長、どうしましたか?」
社長は自分に抱き着く勇気を振り払う。
社長の他にも沢山いる偉そうなおじさん達が、しかめっ面でハゲ散らかした頭をハンカチで撫でる。
「勇気くん。お前クビね」
勇気はニコッと笑うと、再びVRゴーグルをかけた。
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