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次の日、実家に荷物を取りに行き、空港に向かった。空港近くで田原さんに会うと、隣には奥さんらしい女性がいた。想像よりも若くてきれいな人だった。
奥さんは田原さんの右腕について、怒っている様子だった。田原さんが必死で説明していたのがおかしかった。
「君彦さんってそうやっていつも自分の身を大切にしないんですよね」とも言っていた。
私は気になって、前にも何かあったのかと尋ねると、奥さんはため息をついた。そこで田原さんが奥さんに私を紹介してくれた。奥さんの名前は咲良さんと言うらしい。
田原さんが鹿児島で私としばらく一緒に住むような話をしても、咲良さんはあまり気にしていない様子だった。「ご迷惑じゃないんですか」と聞くと、咲良さんは「慣れてるので」と笑った。前に生徒や他の教師が泊まりに来た事があるようだ。
生徒の親にはっきり言い過ぎて睨まれたことや、田原さんの昔の知り合いに絡まれて大変だったことなど、咲良さんは愚痴のように言う。いつもトラブルに巻き込まれて気が気じゃないと。なのに、いつも田原さんはなんとかなると楽観的でへらへらしている。咲良さんはそんなことをべらべらと話していた。だけれども、そこに愛を感じた。お二人は仲がいいんだなと思った。
一方の田原さんは母親と暮らしていた時と比べると全然大した事じゃないと言う。
二人を見ているととても幸せそうで、少し羨ましかった。
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