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午前中の早い時間の飛行機だったため、昼前には鹿児島へ着いた。田原さんは車で自宅近くまで行き、咲良さんを降ろしてから、私を連れて学校へ向かった。その日はちょうど月曜日だったが、一日ぐらいゆっくりすればいいのにと私は思った。
田原さんの担当しているクラスは二年四組だという。女性の先生が田原さんの代わりに臨時で担当をしてくれていたようだった。
田原さんと二人で教室に入ると、生徒たちは田原さんに詰め寄ってきた。生徒たちは怪我した腕についてや、関東に行った話を聞きたがった。田原さんはまず私を「白木先生」と紹介してくれた。そして、飲み会で私に会った話をした。
生徒たちは田原さんの話を興味深そうに熱心に聞いていた。それだけで田原さんがとても慕われていると感じた。
途中で、何で飲み会に来たのかと私に話を振られた。私は急に言われたためはっきりと答えられなかった。すると、田原さんは私を放って昨日私と初めて話したと言った。高校の時の同級生だったが、今まで話したことがなかったと説明していた。高校生にもなるとクラスで話したことがない人も出てくると言っていた。そこで、田原さんは生徒たちに向かって
「知らない人を知るためには何をすればいいと思う?」
と尋ねた。田原さんは生徒たちがそれぞれ答える内容を板書しようとしたが、利き腕でなかったため、すぐにチョークが折れ、うまく書けなかった。そこで私に板書するように促した。
私は生徒が答えた内容を板書した。
「質問をする」
「一緒に帰る」
「遊ぶ」
「話す」
そう書いたところで、田原さんが、「じゃあ一つずつやってみようか」と言って、授業の代わりにやりだした。
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