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教室の窓から見える、どんよりとした厚い雲に覆われた空。それをぼんやりと眺めていると耳障りな女子達の声に、島谷心晴は、大きくため息をつく。
「ちょっあいつキモくない?」
「だよねぇ。てかまじで何あれ?何で頭の上から雨が降ってんの。マジうけんだけど」
そんな罵倒をされている彼女の名前は愛島瑠璃。
彼女の頭上には今この窓から見える雨雲のような、雲が浮き、そこから雨を降らしつづけていた。
その雨のせいで髪は濡れ胸の辺りまで垂れ下がり、前髪が顔の大部分を隠すように張り付いていた。それはまるで女子から身を守るようにして。
決して見える事の無い表情。彼女は一体どんな顔をしているのか。笑っているのか、泣いているのか、はたまた怒っているのか、それは定かではない。
そもそも他人の見た目なんてどうでもいいではないか。俺は他人に興味がない。他人が可愛いかろうが不細工だろうが、そんなこと全く関係の無いことだ。そんなことに口を出す奴らは余程の暇人かその相手が怖いのだろう。
俺は舌打ちをすると、止まない女子達の罵詈雑言に嫌気が差して机を強く叩き立ち上がった。教室の気温が一気に下がり、視線が一気に集まった。
別に島愛さんを助けたかった訳ではない。
ただ、あんなふうに誰か一人を攻撃してないといられない連中が嫌いなだけだ。
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