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俺は傘を広げると水玉の花がパット開く。可愛らしい傘に女子の香りが俺の心を擽る。
彼女は一人を正面玄関を出ると土砂降りの雨の中外にでた。
やっぱりあいつこの雨の中傘をささずに帰るつもりだったのかよ。
小走りで追いかけ彼女の隣に付くと傘の半分を突き出した。
「ほら、風邪引くだろ」
「え……あ……私大丈夫だよ。ほら……あ、あたまの上から雨の降ってるし……一緒に入ると心晴君も濡れちゃうから……」
彼女そう言うと傘を出ようとする。そんな彼女の手を握り静止させた。
「そういう問題じゃないだろ。俺が嫌なんだよ」
………「分かった」
彼女は渋々といった感じで傘の中に入る。
「あの……心晴君……その……手……」
俺は手の感触を確かめながら視線を向ける。その瞬間全身の熱が顔に集中した。
「わぁ!ご、ごめん」
急いで手を離し彼女の明後日の方を見る。
やべぇ。何やってんだよ俺。
その後の帰り道、俺達は言葉を交わす事はなかった。学校から二十分ほど歩くと彼女と同じ塩の香りが漂ってくる。この近くには海がある。海岸近くの駅に着くと彼女は、家が近くなったからといって傘から出ると、そのままそそくさと去っていく。俺はその後ろ姿をただ見てるだけで、ただその場で立ち尽くしていた。
彼女の傘に雨が弾かれる音だけが虚しく響く。
その後、俺は最寄り駅から電車で帰る事にした。
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