天気雨

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私、愛島瑠璃は島谷心晴君の事が好き。 頭に雨降らせてる変な私を変人扱いしないでいてくれたのは心晴君だけだった。そう── ──心晴くんは私を見てくれた。 彼はいつも私の事を助けてくれた。私が他の女子に嫌がらせをされてるといつも気を引いて止めてくれたり、授業で分からなかった所を、かりやすくまとめたノートを貸してくれた。 雨の日一緒に帰ってくれて凄く嬉しかった。なのに私、知られたくなくて逃げるように帰ってごめんね。 ぴーすけと心晴君と三人でよく話したね。ぴーすけも心晴君の事大好きなんだよ。 それなのに……それなのに私、あの日心晴君に酷いこと言ったよね。心晴君がそんな事するはずないって知ってたのに……あの後ね。私教室に戻ってぴーすけに。そうしたらね、ぴーすけが言ったんだ『餌の中身を変えた人が他にいる』ってね。 本当私って馬鹿だよね。もう心晴君に合わせる顔がなくて保健室登校を希望したのに…… それなのに心晴君は今こうしてまた私の前に来たてくれた。 それなのに……。 心晴くんその頭どうしたの……。何で頭の中で血が出てるの? そう。私の目は普通とは違う。体の悪い部分が見える。そして今目の前に見えている彼の怪我は間違いなく命にかかわる怪我。でも私の血なら治す事ができる。できるけど……これをやってしまったら本当の意味で心晴くんの前から姿を消さなくちゃいけなくなる…… 私の本当の姿が見えてしまうから…… いや、何考えてるの私。心晴くん死んじゃったらもっと意味ないじゃない。これで心晴くんが助かるなら会えなくなっても構わない。手を胸にやり覚悟を決めと、私は立ち上がり彼の言葉を遮るように胸の中に飛び込んだ。 最後のわがまま少しだけ許してほしい。 私は両手を彼の胸に添え体を預けた。雨が二人を包み込み二人の間にできた蟠りを溶かしていく。彼も答えるように両手で私を包み込む。 あぁ。両手越しに伝わる彼の体温が冷えた心を内側から暖めてくれる。今だけ私に雨が降っててよかったと思える。だってもし降ってなかったら私が泣いてるのが分かっちゃうから。 自分の舌を噛むと鉄の味が口一杯に広がる。見上げると彼の唇がすぐ目の前に見える。両手で彼の胸元をギュと握り息を吸うとゆっくりと背伸びをして唇を重ねた。 私の最初で最後のキス。 ***
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