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暴漢に拉致され死にかけた翌朝。暴力で痛めつけられた四之宮紫音と恐神縁は、治療のため連れ立って病院に来ていた。
未明から降りしきる雨はやみそうにないが、互いに支え合って歩くうちに相合傘になり、縁はむしろ嬉しそう。だが2人とも痛みが尋常でなく、昨日の昼間のような元気はない。
着いたのは、巨大な大学病院の外科病棟だ。
2人の怪我は異常で、普通の病院なら警察沙汰になるだろう。とはいえ逮捕された加害者も半殺しなことや(彼らは恐怖で口をつぐんでいるが)、紫音の過去、志垣詩乃の存在、建物の破壊、ついでに縁の自転車泥棒…など、調べられると藪蛇になりそうな面倒ごとが多すぎるのだ。
だがここの医長は、紫音の父である四之宮紫門。その辺のところをゴニョゴニョするのは得意で、むしろそういう面倒ごとに首を突っ込むのが大好きな、困った大先生なのだ。
まあ、この親にしてこの子あり…といったところか。
「紫音〜!来たのかい、よかったよ。すぐに私が診るからな。なーに、2時間待ちだが他の患者なんてすっ飛ばして…」
「やめてよパパ、そういうの私嫌いなの知ってるでしょ。普通に待つからほっといて!ふん!」
紫音にはベタ甘の紫門だが、根が軽薄なので、いつもこんな調子で紫音にたしなめらている。不満そうな紫門に縁が挨拶する。
「おはようございますお父様、恐神縁です。今日はお世話になります」
「ああ恐神さんとこの神社の!昨日は紫音が迷惑かけたようでごめんね〜」
「パパ。私はいいけど縁は、他の患者なんてすっ飛ばして5秒で診てあげて」
「お、そうかい。じゃあ縁ちゃん、待合室に座って…」
「いいですいいです、大丈夫です。はは、本当に親子ですね、ははは…」
とんでもない似たもの親子だが、縁はまた一つ紫音の思いやりを感じ、嬉しくなる。
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