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墨田は雨の方へ顔を逸らした。朝来野は事務机の横へ置いてあるイスに座って、墨田と同じように雨を見た。
「雨はやっぱり止まなかったですね」
「そうだね。止まなくてもいいけど、こんなことならアオウミウシを逃がすんじゃなかったって考えてしまうよ」
ザー……。
二人で雨を眺めるこの時間が永遠に続きそうだった。
そっちを向いたままじゃつまらない。朝来野は立ち上がって墨田の視線のある方、降り続ける雨の前で両腕を広げた。
「この雨は私が降らせてるんです! 私がこの洞窟にいる間、この雨は止みません!」
「…………」
墨田は目を見開いて、朝来野と雨を眺め続けた。
「じゃあ、この雨はずっと止まないね」
墨田の幼さに合わせて、朝来野は少女のように頷いた。
外が日照りがどれだけ続こうとも、この洞窟の雨は止むことはない。アオウミウシになった彼女が毎日通い続けて、雨を降らせ続けているから。
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