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外はさらさらとした雨が降っていた。
梅雨らしく湿った空気を吸い込む。雨は静かに降り続いていて、アパートの階段を艶々と濡らしている。雨粒は大きく、傘の下にいると、小さい球を弾いているような音が耳を塞いだ。しばらくはやみそうもない。
階段の手すりに片手を伝わせて、水滴を弾き飛ばしながら降りた僕は、最寄りのコンビニへ向かった。
コンビニの傘立てには様々な傘が無造作に突っ込まれていた。端に自分の傘を差し入れて、思いのほか目立っているマスキングテープを柔らかい視線で撫でる。
自動ドアをくぐろうとした時、男が真横を通り抜けて行った。すれ違いざまに、ヘアサロンで使われているようなシャンプーの匂いがしたが、そんなことよりも肩がぶつかったことに驚かされた。むっとしながら店に入る。
男は店の奥へ慌ただしく体を滑り込ませていた。白いシャツは濡れているのか、捲れた袖口は重そうに垂れていた。
気を取り直して、カゴを手に取った。
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