盗まれる傘

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 彼女とのやりとりを思い出しながら、冷蔵コーナーの前で腰を屈めて、商品と丁寧に目を合わせていく。 カットされたりんごをカゴに入れて、続けてカップヨーグルトもカゴの中に入れる。頼まれてもいない小さめの洋菓子も足していく。 邪魔だったら僕が食えばいいだろうと、甘々な考えで頭をふわふわさせながら、コンビニを後にした。  傘立てを見下ろして動きを止める。  傘がなかった。  盗られたんだと思考が追いついても、全身の硬直はすぐには解けなかった。雨音を背景に途方にくれる。 水っぽい空気を吸って肩を落としたところで、店内で売られているビニール傘が目についた。 僕はともかく、買ったものを雨に晒すことはしたくない。この後もドラッグストアに寄る予定があるから傘は必要だ。 ということで仕方なくコンビニへ戻った。
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