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僕は死んだ。
結局指輪がどうなったのか。ここから動けないから自分の体すらどうなったのかもわからない。
分かっていることは君は今でもあの部屋で生活しているということ。
マンションから一番近いこの交差点はあれ以来使わず、遠回りしながら駅に向かっているということ。
そして誠也が三日に一度は君の部屋に向かっているということ。
もしかしたらあの頃瑠璃葉が見ていたのは、僕ではなく誠也だったのだろうか。
そして誠也。君も瑠璃葉のことが好きだったんだね。
君がこの交差点で信号待ちをしている間、『許してくれ、健太』と呟くのを何度聞いたことか。
瑠璃葉も君も生きている。出来れば二人で幸せになってほしいと思う。
だけど。
申し訳ないが僕は未だに瑠璃葉に未練を残している。
今でも彼女を独り占めしたくてしょうがないんだ。
まだこの先も、ここで彼女を見ていたいんだよ。
だから。
僕はここから動けない。
あの日以来、僕はやまない雨に打たれ続けながら彼女を見守っている……
完
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